セミナー風景
岡地さんが持参したオニヒトデの標本
なんとトゲは3~4000本
標本提供:一般財団法人沖縄県環境科学センター
オニヒトデの幼生期間の標本
標本提供:一般財団法人沖縄県環境科学センター
岡地さんは直径20cm余りのオニヒトデと、その子どもの標本を参加者に見せました(標本提供:一般財団法人沖縄県環境科学センター)。「直径 20~40cm。腕
14~18本。トゲは3000~4000本あります。かつての同僚が数えていました(笑)。表面に毒があります。刺されると、人によっては寝込む人もいます。アナフィラキシーショックで亡くなった方もいました。サンゴを食べるときは口から胃袋を反転させて捕食します。サンゴは骨だけの真っ白な状態になります。白くなるので白化と混同されますが、違います。1日1~2回、通常は夜間です。捕食面積は200~400平方cmで、掌より少し大きい面積です。1ヘクタールに15~20個いるとサンゴが徐々に食べられます。他にもサンゴを食べるヒトデはいます。オニヒトデは産卵数が数千万個、幼生期間は2~6週間、2年で大きくなり、寿命は3~5年です。アオヒトデなど他のヒトデは産卵数が数十万個と少なく、5~10年以上も長生きをすることで個体群を維持しています。オニヒトデは多産なので、大発生しやすいのです」
大発生には、「自然現象説」と「人為現象説」があり、研究者の間で議論されてきました。「グレート・バリア・リーフ(オーストラリアの世界最大のサンゴ礁、GBR)のように岸から離れたところにあるサンゴ礁では、サンゴ礁を割って調べると、食べられた場所が分かります。過去にも大発生が起こっていたらしいことが分かってきました。パラオやサモアなどでオニヒトデの地域名があり、昔からオニヒトデが注目されていたということも自然現象説の理由です。一方、人為現象説の根拠としては、大発生の頻度が多くなっていることがあります。大雨が降った3年後に大発生する傾向があります。陸から大量にリンや窒素が海に入り、プランクトンが増え、オニヒトデも増えるのです。自然な状態のサンゴ礁海水中ではオニヒトデの幼生はほとんど死滅するが、わずかに植物プランクトンが増加すると生残率が高まることが分かっています。GBRでは、餌の多い南側で大発生が多く起こっています。陸地からの水が流れ込んだところで大発生します。オーストラリア政府は、サトウキビ畑の肥料が海に流れ出すのを防ぐため肥料を減らす、畜産の廃物をいったんためるといった陸での対策に力を入れています」
沖縄本島では、1960年代からオニヒトデ大発生の頻度が多くなり、1970年代半ばにピークを迎えました。その後減少し、最近では2003年と2013年に増えかかり、現在は小康状態ですが依然として密度は高いです。かつて、オニヒトデ1匹当たりに報酬を出す方式で駆除した時代もありましたが、現在は漁業者が沖縄県から経費をもらって駆除しているそうです。「駆除が逆に大発生の要因になったと主張する研究者もいます。今はいろいろ分かっているから当時のやり方を批判できるけれど、当時としては間違った対応ではなかったと思います。サンゴ礁に依存している沖縄では、駆除は間違った対応ではない」
沖縄県は沖縄の海での状況を知るため、調査研究をしています。岡地さんはその調査を請け負っています。
最後に、岡地さんは「沖縄県では、60年代以降に大発生の頻度が急増したので、私は人為現象だと考えています。東京の人たちにも、オニヒトデが問題になっていることを理解していただきたい。サンゴ礁を守ることが人間の力でできるかもしれない。駆除には税金が使われますので、その点からも理解していただきたいと思います」と呼びかけました。